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「そうか? シシリーはいつもきれいだと思っていたが」
「っつ」
他意はないのだろう。彼は、純粋にシシリーのことを励まそうとしてくれた。
そう思うのに……浅ましくも、シシリーの胸が高鳴る。男性にこういう風に言われたことがない所為、なのだろう。
「まぁ、いい。行こうか」
「え、えぇ」
差し出された手に、控えめに手を重ねる。ぎゅっとつないだ手が、なんだか熱い。
指を絡めたつなぎ方じゃない。ただ、子供のように手を重ねているだけ。なのに、妙に照れくさくて。
シシリーがそっと視線を逸らす。
「今日は、何処に行く?」
「……お任せ、します」
先日はシシリーの行ってみたいといったカフェに行った。順番的に、今度は彼の行きたいところに行くのが筋だろう。
「そうか。じゃあ、少し歩くがシシリーを連れて行きたいところがあるんだ」
エリゼオはシシリーの言葉に対してそんな言葉をくれた。
(連れて行きたいところ、か……)
それは、ほんの少し自分を特別に思ってくれているということ、なのだろうか?
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