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「では、出発します。」
「はい、お願いします。」
このミステリー・ツアーは、車での移動だ。
しかも、客は僕一人。
僕にとってはありがたいことだけど、こういう旅行はとても珍しいのではないかと思う。
そもそも、こんな商売では儲からないのではないかと思う。
僕がそんな心配をする必要はないのだけれど…
「目的地に着いたら起こしますから、どうぞお休みになっていて下さい。」
「あ、はい。」
別に眠くはなかったけれど、運転手とはあまり話をしたくなかったから助かった。
僕は、腕を組み、目を瞑った。
こうしておけば、運転手と話す必要もない。
そうしているうちに、僕は本当に眠ってしまっていた。
「……着きましたよ。」
不意に声を掛けられ、僕は目を覚ました。
「あ、そ、そうですか。」
「では、これを…」
運転手は僕にしおりのようなものを手渡した。
ぱらぱらとそれをめくると、そこにはこのあたりの地図と行き先、そして、することが書いてあった。
「えっと…あの…」
「このしおりの通りに行動して下さい。
では、私は後でお迎えに参ります。」
僕は追い立てられるように、車から降ろされた。
どこともわからないその場所に…
だが、ここがどこかなんて、僕には興味はない。そんなのはどうでも良いことだ。
僕は、しおりを開いた。
近くの寺院を見学するように書いてあった。
まさかどこかで見張られているなんてことはないだろうが、とりあえず、言われた通り、しおりに書かれていることを遂行した。
行き先の指定だけではなく、土産を買えだの、写真を撮れとも書かれていた。
何かおかしな気はしつつ、僕は、土産屋で欲しくもない小さなキーホルダーをひとつ買った。
書かれていることをやり遂げると、いつの間にか、車が僕の傍にいた。
「お疲れ様です。では、お乗りください。」
それから僕は宿に連れて行かれ、また次の日に迎えに来ると言われた。
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