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『行き先のわからない旅に出掛けませんか?』
僕はとある小さな旅行代理店の張り紙に気をひかれた。
それは、今の僕にぴったりの旅だった。
僕は、迷わずその店の扉を開いた。
話を聞けば聞く程、そのツアーは僕の理想にぴったりで…僕は、その旅を申し込んだ。
(結子…ついに決まったよ。
僕の最期の旅が……)
そう…これは、僕の最期の旅だ。
三日後の最終目的地で、僕は人生の旅を終える。
そして、結子の待つ場所へ旅立つのだ。
これが良くないことだということは、十分にわかっている。
だけど、仕方がないんだ。
僕は、結子のいないこの世界では、生きていけない。
彼女がいなくなってからの三年間…
僕はこれでも最大限の努力を重ねた。
どうにかして彼女の死を…この辛い現実を受け入れようと、懸命にもがいた。
だけど、そうしようとすればするほど、僕の心は追い詰められ、疲弊した。
もう無理だ。
僕はもう前を向くことは出来ない。
結子なしでは、僕は生きていけないんだって痛感した。
僕の気持ちが決まった時…
頭に浮かんだのは、旅をすることだった。
それは死に場所をみつけるということだけではない。
結子は、子供の頃から旅行が好きで、当時の夢はツアーコンダクターかキャビンアテンダントになることだったという。
しかし、大人になってもその夢は叶えられず、貧しかったから家族旅行にも行けなくて、今までに二回しか旅行をした事がないから、僕と結婚したら新婚旅行を皮切りにいろんな所を旅したいと語っていた。
だから、旅をすることが、僕に出来る彼女へのたったひとつの供養のように思えたのだ。
彼女は具体的に行きたい場所を言ったことはなかったから、僕は行き先に迷った。
そんな時にみつけたミステリー・ツアー…
これから、僕が考える必要はない。
代理店がどこかに連れて行ってくれるのだから。
(結子…一緒に旅を楽しもうな…)
僕は心の中でそう呟いた。
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