どういうことなのかな?

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東田から質問されたキヌコさんは、 その理由を話し出した。 「すみません、まず 年齢なんですが、  以前、実年齢を表記していた同僚が  契約者様とトラブルがあったり、  単身赴任の方の場合、奥様が心配  されたりするもので、実年齢より  うんと年上の年齢を表記させて  いただいています。  そのほうが契約者様も安心されるので、  そして、名前なんですが、  ハンドルネーム的な? 源氏名的な?  コートネーム的な?そんな感じで……」 「だから、キヌコ、六十三歳ね……」 と東田が言った。 「はい……」と答えるキヌコさん。 キヌコさんは話を続ける。 「それで、ご自宅を訪問する道中は、  会社の決まりで年相応の容姿にする  ようにと……」 「だから、ウイッグにそのバンダナに  あのスニーカーなんだ、でも何で?」 「私共の会社は、契約者様がご不在の時に  ご自宅に上がらせていただくために、  怪しまれないようにと。  だって、若い女性が男性宅に出入りしてたら  色々と面倒にことになりますので……」 「だから、その、不自然なメークなんだ」 と東田が言った。 「おわかりいただけて嬉しいです」 「でも、キヌコさんの会社、  スタッフのほとんどが六十代って  紹介欄に書いてあったけど、  あれ、嘘?」 「あれは、本当です。その私を含む数名が  その、二十代、三十代がいて、  ほとんどが正真正銘 現役バリバリの六十代です」 「そうなんだ」と東田は納得し頷いた。 「あのう~、このこと会社には」 と心配そうな表情でキヌコさんが聞いた。 「言わないよ。俺も契約時間内に帰って  きちゃったわけだからね」 と言うと東田は優しく微笑んだ。
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