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妹は、厨房にいる俺に業と聞こえるように大きな声で言う。
少女は、頬を赤らめて顔を伏せる。
照れ屋ななんだから止めてやればいいのに何で揶揄うんだ?
我が妹ながら性格が悪い。しかもニタニタとこちらを見ながら。
クランベリーチーズとミルクティーを受け取り、イートインに向かう少女と目が合う。
少女は、びっくりしたように目を丸くして軽く会釈してくる。
俺もつられて会釈する。
ひょっとして覚えているのか?
一瞬、ヒヤッとしたものが腹の底を撫ぜるが、少女は直ぐに席に戻った。
良かった。
俺は、ほっと息を吐いて無意識に頭の桃の枝に触る。
まだ曖昧なところもあるかもしれないが直ぐに忘れる。
忘れた方がいい。
俺は、パン作りに集中する。
「ご馳走様さまでした」
少女は、トレイを下げにくる。
妹は、それを受け取り、「またのお越しを」と俺に聞こえるように業と言う。
だから止めてやれよ本当に。
俺は、思わず嘆息する。
「ありがとうございました!」
少女の声がカウンターを抜けて俺の耳に届く。
俺は、驚いてカウンターを見る。
少女は、美しい笑みを浮かべてこちらを見ていた。
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