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「雨の・・・雨の匂いがする」
カエルくんの顔に懐かしい感触があたる。
「そうよ。雨よ、カエルさん。雨が降ってるのよ!」
ジョロウグモさんが沢山ある手でカエルくんの手を握りしめ、雨の降る中、目を閉じてその愛しい雨粒の感触を味わう。
その時だ。
「カエルくんっ!!」
ザーザーと降る雨の中をヒラヒラと一目散に飛んでくるアゲハチョウさんの姿が見えた。
「アゲハチョウさん・・・・」
カエルくんが手をのばすより先にアゲハチョウさんがカエルくんの鼻を抱きしめた。
「カエルくん・・・気がついたのね・・・良かった」
「アゲハチョウさん・・・濡れちゃうよ?」
「いいの。濡れても」
「アゲハチョウさん・・・汚れちゃうよ?」
「いいの。汚れても」
「僕、キレイじゃないよ?」
アゲハチョウさんはその円らな瞳にいっぱい涙を浮かべて
「ごめんね、カエルくん。本当にごめんなさい・・・」
と小さなおでこをカエルくんの鼻の先にくっつけて言った。
「カエルくんはそのままでいいの。そのままがいいの」
夏になればきっと、雨は降りやむだろう。
でも、幸せはずっと降り注ぐんだ。
了
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