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約一ヶ月前、大きな冷蔵庫を買った。知らぬ間に便利な世の中になっていたらしい。海外からでも、一週間以内に届けてくれるのには驚いた。
日本製とは違い、観音開きで左右の機能がきっちり分かれている。右が冷蔵庫、左が冷凍庫――求めていた型そのもので本当に感動した。
この家に来て初めての、大きな買い物である。その喜びも相乗効果を発揮しているのかもしれない。
前の冷蔵庫も変わらず機能しており、キッチンは狭い。安い賃貸だから尚更だ。しかし、以前の冷蔵庫を捨てる選択肢はなかった。
白い息を吐きながら、とにかく散らかった室内を眺める。破れた衣服に壊れた炊飯器、倒れた暖房なんかが力無く横たわっている。
眺めていると腹が鳴き、唐突に空腹を自覚した。
そろそろ食事を作らないと。今日は寒いし温かいものが食べたいな。
指先が自然と昔からの冷凍庫を開く。微かな冷気と共に感情が流れ込み、心に嫌悪感を齎した。
手前側、仕切りで確保された空間には、ベーコンのパックが二つ転がっている。
もうすぐ無くなるから、明日には買いに行かなきゃ。考えながら、ベーコン一つと冷凍うどんを手に取った。
カリカリに焼いたベーコンは、夫のお気に入りである。ベーコンと酒を切らすと不機嫌になるから、常備しておかなければならない。
対して、私は酒とこの燻製肉が嫌いだった。どうしても濃い味を拒んでしまうのだ。
思えば、色の好みもファッションセンスも、私たちはどこまでも違った。けれど、主張すれば眉を顰められる。だから何度も偽った。
意見を殺し続けた結果、家は完全に夫の世界と化している。
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