淫愛

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タンクトップも脱がして今井さんの体を見つめる。 細くて無駄な肉がない。 54歳には思えない体だ。 2人でベッドに倒れ込み、体と体を引っ付ける。 今井さんの生の姿で抱き合って、今井さん自身の体温を直に感じている。 「すごく幸せです」 首元に顔を寄せて今井さんの匂いを嗅いだ。 初めて知る匂いなのにすごく落ち着いた。 加齢臭もなく、柔軟剤か香水の匂いがした。 その匂いが私の体に移ると思うだけで、今日という日がこの数年間で一番幸せな日になる。 「大袈裟だな。ただ抱き合っているだけだよ?」 頭の上から今井さんの声が聞こえる。 「ずっとこうしたかった。あなたに抱かれるのを私の体は待っていた。」 私は今井さんの胸にキスをした。 「独身だからいいよね」と聞こえるか分からない声で呟いて、胸の皮膚に歯を立たせて唇で覆い、思い切り吸った。
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