すみついた、すみついた。

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すみついた、すみついた。

 これは、私が中学生だった頃の話。  過去、何度も人に話したんだけど全然信じて貰えなかった。心の中で釣りだと思っていてもいいから、とりあえず最後まで聞いてくれると嬉しい。正直、本気で怖かったものだから。  人より目立ちたい、特別な人間になりたい。  そんな欲求は、誰だって持つものだという。特に中学生くらいは、いろいろとのちに黒歴史になりそうな妄想をしてしまうものだ。左手に特別な力が宿っていて目覚めると誰も彼も呪ってしまう!だとか。私の封印された邪気眼が!とか。異世界転生したら絶世の美少女に生まれ変わってモテまくる、だとか。有名なアニメに出演し、ヒロインを差し置いてイケメンたちに愛されまくるとかなんとか。  まあ妄想するだけで人に迷惑をかけないのなら自由だろう。  問題は、そういうものを“現実の行動”に持ち込んでしまったパターンだ。例えばそう、みんなに人気者になるため、目立つために撮ってはいけない動画を撮りまくってしまう、とか。  実際、小学生に人気ナンバーワンの職業はユーチューバーだと聞いたこともある。多くの大人がやるような、時間や場所を縛られた辛い労働も必要なし!好きな時に好きなような動画が撮れる!芸能人のように顔と名前が売れる!楽しいことばっかりで、辛いことは全然ない!――みたいな風に夢を見てしまっている人も少なくないのだろう。実際、ユーチューバーほど大変で苦労が絶えない仕事もないと私は思っているけれど。  話が逸れたが。  中学生の時の私と、クラスメートで友達のユリカは、そういう承認欲求の塊みたいなキャラクターだったのだ。選ばれた人間、人気のある人間、みんなに溺愛される人間になりたくて仕方なかったのである。  いつか二人でユーチューバーデビューしようね!みたいなことを普通に話していた。その上で、人気ユーチューバーたちを羨み、時に嫉妬ゆえにアンチコメントを書き込むなんて醜い真似もしていたのだ。退屈で、夢も希望も魔法もない学生生活に飽き飽きしていたからだろう。だからといって、やっていいことといけないことはある。正直、今では本当に申し訳ないことをしたと反省しきりだ。  とにかく。そんなある日ついに、ユリカが行動に移すと言ってきた。ユーチューバーデビューの第一歩として、ホラー系動画の撮影を始めてみることを決意したらしい。  その時ついでに言われた言葉がこれ。 「あたし、隠してたけど実は霊感があるの。おばけがいるところ、なんとなくわかるのよ」  突然霊感がある、と言い出す。  厨二病あるあるである。
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