これからもよろしく

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これからもよろしく

          ◇    「シモン、おはよ」 「み、みや……っ……」  昨夜たっぷり考えて、それでも自分の気持ちがよくわからなかった。  どんな顔をして雅に合えばいいのかと悩んでいたら、校門に寄りかかる雅がいた。  雅はうつむき加減で、でも、明るい口調で話しかけてきた。 「シモン。昨日のことは忘れて? 今までどおり普通に接してよ。もう困らせねぇからさ。な?」  俺を見上げて笑顔を向けた雅が、みるみる目を見開いた。 「シ、シモ……」  雅が口を開けて驚いている。  それはそうだろう。寝不足でクマはひどいし、鏡を見なくても自分の顔が真っ赤になってるとわかる。だって湯気が出そうなほど顔が熱い。  雅が俺を好きなんだと思ったら、もう平静でいられない。 「み、雅……お、俺……」 「シモン、ちょっと来て」 「み……みや……っ」  グイグイ腕を引かれて体育館の裏まで連れて来られた。 「……シモン。そんな顔されたら俺……期待しちゃうけどいいの?」 「き、期待……って」 「シモンも、俺と同じ気持ちだって」  期待でいっぱいの熱っぽい瞳で、雅が俺を見つめてくる。 「わ……わかんない。でも、昨日から変なんだ。雅を見てるとドキドキして、胸が苦しくて。で、でも、試合の熱気のせいだと思っててっ、だからっ」 「もうごちゃごちゃいいよ。なぁ、想像してみて?」 「そ、想像?」 「シモンは俺と、キス……できる?」  雅とキス?!  想像したら顔から火が出そうになった。 「すげぇ顔真っ赤。昨日は赤くならなかったのに……」 「きっ昨日は、頭の中混乱しててっ」 「……じゃあ、今はなんで赤いの?」 「わ、わかんない……」 「キス、してみていい?」 「えっ!」  雅は俺の首に腕を回し、ゆっくりと顔を近づけた。 「みっみや……っ」  柔らかくてあたたかい雅の唇が俺の唇に優しくふれた。  ドドドッと心臓が暴れる。  ふれ合った唇から、まるで電流が流れるように全身がしびれた。  もう心臓が壊れそうだ。  ゆっくりと、唇が離れていく。   「俺のキス……いやだった? もう……したくねぇ?」  雅の声が震えていた。  いろいろごちゃごちゃよくわからない。でも、その答えはもう決まりきってる。 「……したい。もっとしたいっ」  俺は、雅の頬を両手で包んで唇をふさいだ。 「シ……モン……っ……」  頭がしびれるほど気持ちがいい。胸が張り裂けそう。心臓が痛い。  何度も角度を変えて夢中でキスをした。  唇がふれ合うたびに響く音と雅の熱い吐息が、俺の身体を震わせた。  唇をそっと離すと、瞳をうるませて頬を赤く染めた雅が俺を見つめる。   「好きだよ……シモン……すげぇ好き」 「……たぶん、俺も好きだ」 「なんだよたぶんって」 「ご、ごめんっ」 「……たぶん……じゃ、付き合えねぇ……か」 「つっ! 付き合うっ!」 「たぶん、なのに?」 「だってもう俺、心臓壊れそうなくらいドキドキしてるし、もっとキスしたいっ。これって、好きってことだよな……?」  目に涙をにじませて破顔した雅が、俺の胸に顔をうずめてぎゅっと抱きついた。 「それ、好きってことじゃね?」 「うん、じゃあ付き合うってことでっ!」 「……やべぇ……俺涙出そう……もう絶対振られたと思ってた……」 「俺は……クラクラしてきた……もう倒れそう……」  雅を腕の中に閉じ込めるようにぎゅっと抱きしめる。 「シモン……」 「うん?」 「これからもよろしくな……俺の彼氏」 「かっ彼……っ、う、うんっ」  腕の中で雅がふはっと笑った。 「シモン可愛い」  雅と、これからは恋人なんだと思うと、心臓が爆発しそうになった。 「雅……っ」 「ん?」 「俺、キスしたくて死にそう……っ」 「……ん、俺も」    顔を上げた雅と見つめ合い、俺たちは吸い寄せられるように唇を合わせた。    ばあちゃん、見てる?  俺、今すごい幸せだよ。    終
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