巫女の姉が逃げたので、代わりに雨を降らしに行ってきます

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  「様子を見てきますね~」 とヒナはふたたび、龍神様に乗り、空に舞い上がる。  黒雲はまだ遠く、澄んだ空が広がっていた。  朝の光が背中の方から押し寄せてくる。  ヒナと龍神様の前に広がる空も明るく輝き出した。 「美しいですね。  夜明けですよ」 「そうだな……。  それで、これからお前はどうするのだ?」 「そうですねえ。  龍神様に巫女だと認められなくとも、せっせと祈って尽くしますよ。  きっと長老様たちにもそうしろと言われるんで」 「私を信じ、敬うのなら、お前にも村人たちにも幸福を与えよう。  私もヌシと変わらぬくらい、たいしたチカラはないのだが」 「いや、空飛んでるじゃないですか」 「だから、それは人間が歩くのと変わらぬと言っておるだろう」 「じゃあ、これって、人間の男の人に背負われてるのと一緒なんですね。  ……照れますね」 「照れるのか」 「はい」  そうか……と言って、龍神様はまた、黙る。
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