巫女の姉が逃げたので、代わりに雨を降らしに行ってきます

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 村人たちが口々に言う。 「そうだ。  そのために、今までお前を大事に扱ってきたのだから」  シノはおもむろに髪飾りを外した。  丁寧な細工の(ほどこ)された、洋髪にも使える造りの貴重な鼈甲(べっこう)の髪飾りだ。  隣村のまた、その隣村から手に入れてきたという、透けるような見事な布で作られた巫女の上衣も脱ぐ。  ササッと衣を畳んだシノは両手をつき、頭を下げて言った。 「実は、私にはもう、巫女のチカラはございません」  なんとっ? と長老たちが声を上げる。  赤みがかった不思議な色の髪が映える、美しい顔を上げ、シノは言う。 「きっと、私の力は移ったのですわ。  ――我が妹に」  シノはこの村で唯一、農作業をしたことのない、白く美しい手で、妹のヒナを示した。
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