502人が本棚に入れています
本棚に追加
/31ページ
その年は梅雨になっても村に雨が降らず。
森も田畑もカラカラに乾いてしまっていた。
村の神様と言われるヌシ様が住む淵には、さすがにまだ水が残っていたが。
量は限りなく少なく。
また、そこから、田畑に水を引こうにも距離がありすぎた。
星の美しい夜。
困り果てた村人たちは長老の家に集まった。
座敷の上座に座る、淵のヌシ様の巫女、シノに向かい、長老が言う。
「シノよ。
お前が人柱となり、この地に雨を降らすのだ」
文明開化の光も届かぬ田舎では、まだ、村人たちはイニシエの因習に囚われたままだった。
最初のコメントを投稿しよう!