雨の日の巨人

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雨の日の巨人

 それは雨の日だった。  私は雨がいつ止むのかと考えていたら、雨がまるで透明な大きな物がいるように跳ねている。  私は巨人がいるとなぜか思った。  そんなことを考えながら見ていたら一話の鳥がその透明な巨人に向かって飛んでいって消えた。  目があった気がした。見られたと思った。私は走り出した。  しばらく走ったが雨が強くなり喫茶店に入った。その喫茶店には巨人の絵が何枚も飾ってあった。飾ってあった絵には巨人が人を食べている姿が描かれていた。  客もおらず気味悪いと思ったが、出る勇気がなかったのでカウンターに座りコーヒーを頼んだ。 「巨人がいるのは分かるんだけど姿が分からないんですよね」  マスターがコーヒーを持ってきた時にそう言った。 「見たよね?」  マスターが私の顔を見る。帰ろうかと思ったが巨人が気になっているので話してみることにした。  何か知っていますか?と私が聞くと。 「巨人はね世界を作っているんだ。たまに作り変えてる時にその姿を感じる時がある」  鳥を食べましたよ。絵の巨人も人を食べている。私がそう言うと。 「そりゃ腹はへるし」  そこで会話は終わった。雨もやみ店を出るとその店には看板がなかった。晴れた空を見て今の天気だと巨人を認識する方法がないと思った。急に恐ろしくなり家まで走った。  家につくと家の前が不自然に濡れていなかった。まるで家の前に何かがいたみたいに。ふと腹がへるという言葉を思い出した。  それからだ私は鳥が飛ぶのをよく見るようになった。また鳥が消えるんじゃないかと見るのだ。  夜歩いていると巨人がいた。巨人は私に気づくと私を食べた。そんな夢を見るようになった。  夢占いでは巨人は権力の象徴だとか殺されたら運気の低下だとか言うが、現実の恐怖として感じていた。  私はあの喫茶店に行った。前と同じく私以外客がいない。巨人の絵も飾ってある。  巨人に食べられる夢を見ていると伝えたら。 「どんな姿でした?」  マスターが聞いてきた。  そこの絵のような感じだと答える。 「じゃあ問題ないですよ。絵に影響されただけです。雨の日の出来事も気のせいです」  マスターは笑った。  そして私はマスターから一枚巨人の絵を貰った。今ある絵を違うのに変えるからいらないと言うのだ。  私が貰った絵は巨人が牧場で人を食べている絵だ。  なんとなく玄関に飾っておいたというか、他に場所がなかった。  次の日絵の巨人に牙が生えている気がした。  その次の日絵の巨人は大きく口を開けていた。その絵を眺めていたら、腹が空いたと聞こえた気がした。  私は陸上部に所属していてほぼ毎日走っている。  私の右足が肉離れをおこした。  夢を見た。夢に巨人が出てきて私の右足をくれと言う。要らないだろう?だからくれと言うのだ。  私が困ると言うと代わりをやるからと言って私の右足を食べた。  私は飛び起きた。  右足はある。  なんと右足の痛みがなくなっていた。病院に行くと医者はすごく驚いていた。  右足の調子は良く、いや良すぎた。なんか足が速くなった気がする。私は右足をながめ、巨人の代わりの足という言葉に恐ろしくなった。  私は巨人の絵を後輩にあげた。後輩の好みにあったらしく喜んでくれた。  しばらくして後輩は事故にあった。足がだめになるかもしれないと悲しんでいたが、足は順調に治った。 「夢にくれた絵の巨人が現れて、巨人が要らない足ならくれって言うから、代わりをくれるならあげると答えたら足を食べられんですね。その夢の後から順調に治ったんですよ。関係ないと思いますが不思議だなって」  後輩が私にそう言った。後輩は走るのが少し速くなった。また事故にあったらタイムが上がるかなと言うので、アホなことは考えるなと答えた。  そして後輩はいなくなった。  全身を取り換えたいと言ってたらしい。  全身を取り替えた後輩とたまにすれ違ったりしているのだろうかと馬鹿なことを考えるようになった。  雨が降る。巨人が歩いているのを感じる。 「お前に食べられたらアイツに会えるか?」  私は巨人に叫んだ。    
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