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「それは僕が食べたいから買いに行くだけですよ。
あの服は、たまたまナタリーさんに似合いそうなのが目に付いただけですから…気にしないで下さい。」
「あんたはその代金さえ請求しない。
あぁ、本当に申し訳ない。」
「何をおっしゃってるんです。
僕だって、いつもこうしてお茶をごちそうしていただいてるじゃないですか。」
ケヴィンの気遣いの言葉も、ナタリーには届きません。
ナタリーはうなだれてしまい、ケヴィンはどうしたものかと困ってしまいました。
「それじゃあ…」
ケヴィンは、部屋の中を見渡しました。
部屋には、古びた家具がいくつかあるだけです。
ケヴィンは、ふと壁にあるものに目を止めました。
「ナタリーさん、あの絵をいただいて良いですか?」
「え?!あんな絵が欲しいのかい?」
「ええ、以前から気に入ってたんです。」
ケヴィンは、ナタリーの心の負担を軽くするため、何かをもらってあげようと考えたのです。
部屋に、もらえそうなものはその絵しかなかったので、ケヴィンはそんなことを言ったのです。
それは、小さな家の前に立つ美しい女性が描かれたものでした。
「あんたが欲しいって言うなら、持ってお行き。」
「ありがとう、ナタリーさん。とても嬉しいです。」
ケヴィンは、女性の描かれた絵を持って帰りました。
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