愛に一番近い感情

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愛に一番近い感情

 開演まで四十分、昼前。少し、着くのが早かったかもしれない。  洗練された内装の建物内に入り、劇場があるB1フロアに移動する。  少しふわふわした気分だ。デビューしてからもう五年たつけど、自作の放送や上演の前は、いつでも少し緊張して浮かれ気分になる。  ……それとも、今日のこれは、別の興奮がまだ冷めていないせいなのだろうか。  ズキ、と胸の内が痛む。  ロビーに降りてもすぐに受付に行かず、チラシが置かれた棚を確認する。  先生方やライバルたちが次に発表するものは気になるし、自分の勉強のためにも常にチェックしているべき。それはそうなのだけど……  真っ先に目に飛び込んできたのは、ライバルであり一応恋人同士の関係であるはずの柴山(しばやま)京介(きょうすけ)さん脚本の舞台作品のチラシだった。  ほんの少しの対抗心と嫉妬、そして同時に愛しさと不安が湧く。  昨夜の喧嘩を思い出す。  言うのに、それなりに勇気が必要だった。だって、正直なるべくなら関わりたくないものだし、仮に立場が逆だとしても乗り気になれない相談だし。
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