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第一話 ドラキュラ伯爵に変身!
「目は赤のカラーコンタクト、色白で頬が少しこけたメイクにして……と。口元にちょっとだけ血糊つけさせてくれよ。気に入らない?
あったほうが、それらしいよ。ヘアスタイルは定番のオールバックにするぞ。おお、これだけでかなり印象がかわったな」
鏡の中の自分が少しずつ変身するのを見て、得能哲哉の胸が踊った。
今日のメイクはいつもとちがう。自分の看板を外すためのものだ。
「次は牙だけど――」
「駄目だ。歌うときの邪魔になる」
「つけ爪は?」
「却下。ギターが弾けなくなる」
「残念だなあ。かわりに耳を尖らせるか」
「スター・トレックのミスター・スポックか?」
「心配しなさんな。だれもそっちを思い出さないよ。衣装もヘアスタイルもちがうわい。
第一、スポックの口元に血糊がついてるかい?」
「そりゃそうだな」
「メイクは終わり。ほらよ」
渡されたのは白いシャツに黒いスラックス、そして鮮やかな真紅の裏地を使った黒いマントだ。
ステージ衣装はいろいろ着てきたが、このタイプは初めてだ。どんな自分になれるのか、ワクワクしながら袖を通した。
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