プロローグ

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 朝靄の立ち込める林道を走り抜ける蹄の音が響いた。  その数は二頭分。  音の反響が少ない林のため、それなりの人間が聴けば直ぐにその数は把握されるだろう。  ただ、駆ける馬の速度は尋常ではない。  薄闇にさらされた悪路と視界の悪さを無視して、通常の馬の速度では有り得ないスピードで道を駆け抜ける。         このペースで馬を走らせていては馬自体が潰れる速度だ。  普通の馬ならばーーの話である。  走る騎馬はどちらもただの馬にあらず。  吸血馬である。  吸血馬を操れるのは吸血鬼のみと謳われるが、片方に乗るのは人間だ。  本来御しきることは能わず落馬するのみと誰もが思うところだが、その人間は何故か乗りこなしている。  本来有り得ない光景だが、それは有り得ない二つの事柄が重なったための奇跡のようなものであった。  一つはその搭乗者が放つ殺気のために、大半の動物どころかモンスターさえも逃げるか気絶、悪ければショック死し、乗れる動物がいない状態だったが、既に死んでいる吸血馬はその例外に位置する。
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