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睦月の序
「はぁ………、はぁ………」
汚い路地裏の細道で雨に打たれながら、コンクリートの地面に伏していた。随分前に限界を迎えた空腹により意識は朦朧とし、体を起こすことは愚か指先を動かす事も、声を発することも出来ない。唯一動く双眸で、ただ呆然と遠くの通路を眺めながら、少しも凌げるはずのない、空から頬を伝う雫を舐めるのが精一杯だった。
「でもここなら、ワタシは…」
そう呟く直前、死角から一つの足音が近付いて来る。誰だろう。通行人かな、変わった話し相手さんかな。ともかくその音は、今までに聞いたことがないのは確かだ。足音が迫ってくるのを片耳で聞きながら、ワタシは目を閉じ呼吸を止めた―。
「誰か…」
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