ジョルジュとカウントダウン

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ジョルジュとカウントダウン

 2XXX年。  長年の議論の末、人類はある大きな決断を下すこととなった。それは人類の未来を、地球環境の改善をAIに託すということである。  現在、地球の人口はおおよそ八十億人。  しかし、健康で裕福な生活が出来ている人間は、そのうちの二割程度に留まっているとされている。理由は単純明快、人類が健康で安全に暮らすことができる土地がどんどん減っているからだ。  人口の数は増え続けていくのに、土地や食べ物が増えていかない。  己の国の利益や安全ばかりを優先して環境汚染を繰り返す国、侵略戦争をする国、貧しい国を虐げる国。こんなことではいつまでたっても地球環境が改善されることはない。  ここままではあと百年で地球は人が住めない場所に変わってしまうだろう――そんな計算結果が出てしまっては、国のトップたちも重い腰を上げざるをえなかったのだ。 「地球環境の改善はもはや、人類だけではどうにもならない。そもそも、我らが自分たちの利益を度外視した政策なんぞできるはすがない」  現在の各国のトップの多くは、けして無能ではなかった。  自分達が欲にまみれていることも、世論を恐れてできない対策が山ほどあることも理解していた。ここ数十年進展しなかった以上、これからも同じだろうとわかっていたのだ。  ゆえに皆で話し合って決意したのである。  すべてをAIに委ねよう。  地球環境を管理し、より良くしていくためのプログラムを作り出し、その指示に従って生活することにしようと。たとえ、それがいかに理不尽な要求であったとしてもだ。 「そんなわけだ。オットマン博士。AI 開発の権威たる君に全てを委ねよう。よろしく頼むぞ」 「わかりました、大統領。私達にお任せください」  研究開発を委託された者こそ、私、アシュリー・オットマンである。  各国から集められた選りすぐりのエンジニアたちを率いて、私は早速開発に取り掛かることにしたのだった。
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