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 高崎は元バスケットボール選手だけあってか、背が高い。絵の身長が170センチちょっとで、それより優に10センチは高いから、180を超えているだろう。年齢はよく知らないが、二十代後半?三十代前半?要は四捨五入して三十歳、アラサーだ。職業、教師。担当科目は数学。バスケ部顧問。顔はまずまず。いつもだるそうな態度に反して意外と熱血。なにげに金八先生とかコンプリートしてそう。   「新学期にクラス全員が無事にそろってなにより。夏休みが終わったからには、切り替えて行けよ」  休み明けの朝会をいつも通りのローテンションで高崎がしめる。日直の礼、の一声に合わせておざなりに頭を下げた。  切らしたシャーペンの芯を買いに休憩時間に購買に行くと、葉山亜紀にばったり出くわした。 「あれ、瀬戸崎じゃん。なんか久しぶりー」  ひらひらと手を振りながら葉山が近づいてくる。以前は少なくとも週3日は体育館で顔を合わせていたのに、バスケ部から離れたとたんにほとんど会わなくなっていた。 「聞いたよー。さやかと喧嘩したんだって?」 「いきなりその話かよ…」  絵は思わず及び腰になる。葉山とさやかは昔から仲が良く、絵がさやかと付き合いだしたときには親友を取られたと葉山には盛大に拗ねられたものだ。  葉山がずずいと絵に迫る。身長があまり変わらないので、やけに顔が近い。 「さやか、めっちゃ凹んでたよ。さっさと謝りに行きなよ」 「はあ?よけいな口挟むなって。だいたいなんで俺が悪い前提なんだよ」 「怒らないことで有名な、神か仏かさやか様か、のさやかだよ?喧嘩なんか瀬戸崎が悪いに決まってる」  問答無用といった体で葉山が言い切る。絵は苦笑いするしかない。 「原因はあれでしょ?噂になってるやつ。あの人のお相手は昔から高センだから気にするなって、さやかに言ったんだけどね」 「昔から?」 「あれ、知らない?結構有名だよ」  葉山が意外そうな顔をする。 「お前みたいにゴシップネタの収集癖、ないもんで」 「うわっ感じわるう!」  葉山がぎゃんぎゃんと騒ぎ立てた結果、購買のおばちゃんに「静かに」とにらまれ、慌てて購買の外に出る。
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