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しばらくの間、2人共、荒くなった息を吐きながら抱き締め合っていた。やがて息が整ってくると、健さんは「待ってて」と言って私から離れると、素早く処理をしてから再び戻ってきて私をぎゅっと抱き締めた。
「奈々…好きだ」
そう囁きながら、健さんは私の額に軽く啄むようなキスを落とした。
「私もです…」
健さんによりくっつくようにして身を寄せながら、私は答えた。
「…痛くなかった?」
私の髪をそっと撫でながら、少し不安そうな声で健さんが問う。
私は先程の行為で乱れてしまった自分を思い出してしまい、恥ずかしくてただ頷くだけになってしまった。
でも、痛くなかったのは本当だ。
何度もキスをされ、何度も“可愛い”と言われ、優しく触れられて、全身を蕩けさせられてしまった気がする。
「…どうした?」
黙ったままの私を健さんは少し心配そうに見た。
「本当は痛かった?…遠慮しなくていいんだぞ?」
「ち、違うんです!そうじゃ、なくて…その…」
不安そうな健さんを安心させたいけれど、その先を言うのが恥ずかしくて、躊躇してしまう。
「…奈々?」
ますます不安そうになる健さんを見て、私は意を決した。
「えっと…その…全然、痛くなくて…。むしろ気持ち良くて…たくさん乱れてしまったから、は、恥ずかしくて…」
はしたなく聞こえてしまうのではないかと心配になりながら、それでも私は健さんを安心させたくて、そう言った。
でも、やっぱり恥ずかしくて、健さんの顔を見るのが怖くて、私は俯いていた。
やっぱり言うんじゃなかった、とも思った。
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