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「もう出てきていいよ。お姉ちゃん。」
この部屋に他に誰か居るのか?
すると、隣の部屋に人影が見えた。
俺は思わず後ずさった。
「久しぶり、優ちゃん。」
その声の主は、紛れもない桜井知英だった。
見た目も高校生の面影がある。
なら、俺の目の前に居るこの女は誰だ?
「優ちゃんのことがどうしても許せなくて、妹に頼んで近付いてもらったの。妹は私と似てなくて美人だから。」
「え、整形は?」
「してない。」
「俺は騙されてたってこと...か?」
「優ちゃんも私を騙したでしょう?」
「まじか......」
俺はその場に項垂れた。
そんな俺に、知英は手を差し伸べた。
「私のことは愛してくれる?」
俺は知英を見つめた。
「やっぱり、妹の方が可愛いもんね。もう満足。里奈帰ろう。」
「里奈?」
「妹の名前。優ちゃんが寝たのは里奈ね。」
俺の思考は完全に停止した。
「ね、里奈。優ちゃん、動かない。」
「私たちに騙されたことがショックだったんじゃない?」
俺の傍に知英が来た。
「優ちゃん、さよなら。私の事忘れないでね。」
それが2人と会った最後だった。
きっと、俺は一生、知英の残像に縛り付けられるだろう。
俺の自由は、もうない。
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