血の雨よ降れ、黒き雨よ降れ

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 俺はプリゴジン。プーチンの料理番にしてロシアの民間軍事会社「ワグネル」の創設者エフゲニー・プリゴジンだ。  今回の反乱が失敗に終わったので、俺が完全に失脚したと思い込んでいる愚劣なエブリスタ利用者が複数いると同社に潜入させたスパイからたった今連絡が来た。その勘違いを訂正してやろうと思って、ここに書き込んでいる。  ワグネルはモスクワを強襲せずに撤退したが、それは計算のうちだ。当初から、その予定だったのだ。  考えてもみろ。モスクワを防衛するロシア空軍は、俺たちの頭に爆弾を雨あられのように落とせるのだ。奴らが本気になれば核兵器の使用も辞さない。どの道、俺たちに勝ち目はなかった。  それなのに、どうして反乱を起こしたのか?  ロシア人民の心をつかむためだ。  ウクライナ侵攻の長期化で、ロシア人は強い不安を抱えている。それは当然だ。プーチンは強い大統領としての威信を失った。ロシア軍は無能の集まりであることを露呈した。国家が破滅の危機を迎えているというのに誰も頼りにならないのだ。  そんなとき強いリーダーシップを示すことは大いに意義がある。  だが、それでベラルーシへ追放されたのなら何の意味もない、と反対する者がいることだろう。  それは違う。ベラルーシへの亡命は、こちらの望んだ結果なのだ。  ベラルーシに配備されたロシアの核兵器は、もうじき俺の物となる。戦術核兵器を管理する将校団は俺に忠誠を誓ったのだ。ベラルーシ到着後、核を搭載した弾道ミサイル・イスカンデル一発をキエフに打ち込むつもりだ。ゼレンスキーを一瞬で水蒸気に変えてやれば戦局は一気にロシア側、いや、ワグネル側が優位になる。  北大西洋条約機構(NATO)が介入しようものなら、ポーランドとバルト三国も核攻撃し、現地に駐留するNATO軍を焼き尽くす。  そして次はNATO諸国の本土を核攻撃する。西ヨーロッパを核の炎で燃やしてやるのだ。  ここまでやれば、根性無しのプーチンやショイグ国防相も全面核戦争の決意を固めるだろう。アメリカ本土を核ミサイルで飽和攻撃してやるのだ。だが、それは分かったものじゃない。何しろ、あいつらにはガッツが無いからな。核の発射ボタンを押す勇気の無い軍事指導者は生きる価値が無いってのに。  あいつらが全面核戦争を、もしも起こさなかったら、俺が引導を渡してやる。尻が生クリームだらけの間抜けな将軍どもと一緒にミサイルで串刺しになるがいい。  そしてロシア民衆の心をつかんだ俺が、新しいロシア大統領に就任するのだ。  そうだ、俺は日本を核攻撃する予定がないと伝えておこう。俺の代わりにロシアと同盟している隣国が核ミサイルを撃つ。お前らの頭上に血の雨が、続いて黒い雨が降ることを心から祈り、筆を措く。
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