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「ごめん、こんなところで泣いたりして」
とりあえず家の中へ入って座ってもらう。いつかは話し合わなきゃいけないのはわかってる。ただ、今冷静に話せるかどうか自信はないから黙っていた。
「私の何がいけなかったの?」
「何って、自分でわからないの?」
「……うん」
「山口さんが、沙織の家に行ったって」
「あ、それは」
「私は、あげてもらえなかったのに。山口さんは呼ばれたって言ってた」
「あ……」
「沙織は私のこと……」
話し始めたら止まらなくなって、なのにーー勝手に流れる涙が邪魔をして最後まで喋れなくなった。
「ごめん」
これで終わりなのかな、私たち。
「最初から正直に話せば良かった、梨紗を悲しませるつもりなんてなかった、ほんとゴメン」
「話すって?」
「私の部屋、凄く汚くて」
「えっ」
「汚いっていうか、モノが片付けられなくてゴチャゴチャしてて、とても梨紗を呼べる状態じゃなくて。山口さんが断捨離が上手だって聞いて、やり方を教えて貰ってて、実際に見てみないとわからないって言われたから来てもらって。かなり酷かったみたいで呆れられたけど、コツを教えて貰って、今自分で片付けてるところで、だからあともう少し待っーー」
「待てない」
「え」
「今すぐ行きたい」
「あ、でも」
「嘘かどうか確かめる、いいよね」
「ーーはい」
今すぐって言ったけど、もう遅い時間だったので翌日に行く事にした。
沙織が、どうしてもって譲らなかったので、迎えに来てもらった。
「わざわざいいのに、電車くらい1人で乗れるし」
「わかってる。私が来たかっただけだから」
まだ少しわだかまりがある。私は沙織のこと疑ってるわけじゃない、そんなこと出来ないって知ってる。だけどやっぱりーー
「ふぅん、そんな酷くないじゃん」
「そ? 頑張った甲斐があったかな、わっ、そっちはーー」
リビングの隣の部屋を開けようとしたら止められた。
「ーーまだ途中だからさ」
「ふぅん」
チラッと見えたのは、ダンボールとか本とかで、確かに片付けの途中のようだった。
「お茶、入れるね」
「ありがと、一本電話してもいい?」
「うん」
沙織がキッチンへ行っている間に、私はスマホを操作した。
「あ、山口さん? ごめんねお休み中に。私、今小澤さんの家にいるのーーそうそう、それでねーーうんうん、これからは私が手伝うつもりだからーーうん、大丈夫、ありがとうね」
通話を切ったタイミングで、お茶がテーブルへ置かれた。
「えっと」
「山口さんも忙しそうだから、これからは私と一緒に片付けよ、いいよね」
「いいの?」
「これは私の我儘なんだけど、この部屋に私以外の人を入れないで欲しい」
「あーーうん」
気付いてしまったのだ、私は嫉妬してたんだって。
「沙織を独占したい」
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