運命なんて後づけで

プロローグ

　俺は特に運命論を信じているわけではないのだけれど『一度目は偶然、二度目は奇跡、三度目は必然、四度目は運命』だと、誰かが言っていたことを不意に思い出した。
　何故、急にそんなことを思い出したかというと、彼女と偶然に会うのが四度目だからだ。

　初めての出会いは、街中で彼女が落とした鍵を拾った時。
　二度目は行きつけの居酒屋のトイレの前で。
　「あ、その節は…」と改めて謝辞をもらった。
　三度目はまた別の日、街中で女性二人が酔っ払いのオッサンに絡まれている所を助けに入ったら彼女だった。
　もう、正直それだけでも偶然って重なるもんだなと思っていたのに、四度目に大学時代の先輩から紹介された時には嘘でしょ？と思った。
　それは相手も同じで、二人顔を合わせた時に『嘘！？』と漏れ出た声も同時だった。

　彼女は二重瞼のつぶらな瞳の女性で、唇は薄くて、キュッと口角を上げて笑う顔が第一印象だった。それから、透き通った耳にすんなりと馴染む声と丁寧な言葉遣いが素敵だと思った。
　正直、彼女に初めて会った時から好みだなと思っていたのだ。だから、偶然が重なる度に"もしかして何かが始まるのでは？"と期待して、俺は胸がざわつくのを感じていた。