(43)集う仲間

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 見えないはずの火花がバチバチと散る中、リルカとグリードがさりげなく二人を引き剥がすと、イドリースと話していたムゥダルがルーシャに声を掛ける。 「おい怪力女装」 「イヤねダーリン、誰が絶世の美女よ」 「お前マジ耳どうかしてるだろ。そんなことよりお前の飼い犬、逃げたんじゃないか」  ムゥダルの言葉はあくまで比喩だが、その場にいるリルカとグリードにはすぐにその意味が把握できた。ウェイロンだ。 「親元に帰したわよ。アンタたちもよく知ってるはずよ。ナファニス・ツェルナーって神父のところにね」 「お前、どうしてそれを。しかも親元に帰したなんてどういうつもりだ!」  グリードが身を乗り出してルーシャの胸ぐらを掴むと、まずは話を聞けと掴まれた手をゆっくりと引き剥がす。 「こっちも色々あったのよ。それでウェイロン本人に口を割らせたの、あの子も可哀想な立場なのよ」 「本人から聞いたってお前、そんな話に信憑性はあるのか」 「ええ、この目で見たわ。全身に術式が刻まれていて、本人の意思とは関係なく動きを制御されるようになってた。この意味は分かるわよね」 「そんな」  リルカが口元を覆うと、その場にいた全員も押し黙ってルーシャの言葉が続くのを待つ。 「結論だけ言えば、ナファニスはウェイロンの術式が完全に馴染むのを待って、それが完成すれば思いのまま動く人型の傀儡を手に入れることになるわね」 「じゃあどうしてナファニスなんかの元に送り出したの」 「犬死にさせないためよ」  ルーシャは悲痛な顔をするリルカの頬を撫でると、顔を引き攣らせるマーベルは無視して話を続ける。 「もちろんこちらで保護を目的にウェイロンを拘束も出来たでしょうけど、発動できる魔術が想定出来ないとなると、手元に置く方が危険度は高いわ」
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