20. 側妃とのお茶会

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まるですべてを知っているかのような口ぶりだ。 私は驚いてロイドを見返したのだが、その反応でロイドは肯定だと認識したようだ。 「何を言われたのです? まぁあの側妃が言いそうなことはある程度想像がつきますが。ご不快な想いをされたのではありませんか?」 「なぜそう思うの?」 「エドワード様がこの前のタンガル帝国の一件でアリシア様にご興味を示されたのは事実です。それをあの側妃が黙って見ているとは思えませんから。調子にのるな、勘違いするななどと言われたのでは?」 「本当にロイドには敵わないわ。まるでその場で見ていたようね」 状況から察してその人物が言いそうなことを推測するロイドの頭の回転に舌を巻く。 ロイドに促されて、私は先程の出来事をかいつまんで説明した。 唇を引き結び、眉を顰め、ロイドは大層不愉快そうな表情だ。 「……それで、アリシア様は何も言い返さなかったのですか?」 「そうね、概ね事実だもの。勘違いしていないから大丈夫よと言っておいたけど?」 「もっと怒っても良いのですよ? アリシア様はリズベルト王国の王女であり、エドワード様の婚約者で将来の王太子妃なのです。側妃にそのように言われる筋合いはないのですから」 「別にいいわよ。マティルデ様とエドワード殿下の仲を邪魔するつもりはないもの。大人しくしているわ」 私が淡々と答える様子にロイドはなぜか痛ましそうな表情を見せる。 可哀想だと同情でもされているのだろうか。 「アリシア様は本当に無欲ですね……。安定した衣食住が補償されているだけで今の生活は満足だとおっしゃる。……なぜそれほどなにも望まないのですか? もっと希望を述べられても良いのに」 真剣な目で問いかけられ、答えに窮して私は口ごもってしまった。 だって本当にこれ以上望むことなんて特にないのだ。 多少面倒だと思うことや、諦めることがあっても、私は十分に幸せで恵まれていると思うのだから。 私からの返答は求めていなかったのか、私が黙っていると再びロイドの方が口を開いた。 「一つだけ言わせてください。女は美貌がなければ男を虜にできないと側妃に言われたそうですが、それは完全なる誤りですね。……どんなに容姿の整った女にも興味がないのに、顔を知らない人に惹かれるということもありますよ。私の経験談です」 美しい赤い瞳にじっと見つめられて意味深な言葉を告げられ、私は思わずドキリとする。 それがなぜかは分からない。 なのに、なんだか無性に胸がドキドキと騒めいてしかたなかった。
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