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変質
「ぶ、ひ、あーたま、」
リュシアンが赤ん坊なのに、悪い顔をして笑い、多分、母様と言ってくれたみたいだった。
「リュシアン、凄いねー!
僕は初めて誰かと魔力を合わせるなんて事したよー!
それに、銀色なんてあるんだ!? 知らなかった! きっとギルバルティ様はリュシアンの魔力を喜んでくれるよ!」
キンクマハムスターの第三王子は、自分の姿に茫然としていた。
「シアン、リュシアン、魔力が、えっと、あ、っと、リュシアンは身体、大丈夫なの?!」
グランが抱きしめた僕らの魔法に驚きながら、リュシアンが出した魔力に小さい子供の体が耐えられるはずがないと焦っていた。
「う!うー!うー!
と、たま、いあ、い!!!」
小さいながらに一生懸命腕を突っ張って、グランを押し退けようとして、父様、嫌いと言っているみたいだった。
「リュシアン、リュシアン、ごめんよ、父様も叔父さんがあんなに分からずやだと思わなかったんだ」
そうだ、リュシアンはグランの子じゃないって知ってしまったんだ。
「ラグランジュ様、僕はリュシアンへの暴言を許す事が出来ません。
申し訳ありませんが、実家へ帰りたいと思います」
「え、シアン? シアン!
私は君達を守るし、こんな事絶対皇室の本意じゃないよ!」
「でも、証明できませんよね。
リュシアンの心の傷がどれ程だと思うのですか?
僕だけの子だと最初から申し上げてきました。
それが本当になるだけです」
心の底から怒りしか湧いて来なかった。
第三王子みたいな反応の方が本来なら多いはずなのに、両陛下や第一第二王子達の気持ちが嬉しくて幸せだったから余計に裏切られた様な気持ちが強かった。
それはリュシアンも同じ、いや、それ以上なんだと思う。
父親だと思っていたんだから。
「兄上、なんで、」
「私が悪いのか!? 事実じゃないか!」
どこが面白い人だ、罪のない子供の事まで罵倒しておいて、一生ハムスターでいろ!
「う! うあ、あーたま!
ちゅ、ちゅ、ちゅ」
リュシアンが僕の頬にちゅーってしてくれた時、初めて涙を流していた事に気づいた。
「あーい、あーい、とんてーて」
痛いの痛いの、飛んでいけ、?
「リュシアン、ありがとう。
母様はもっと強くならなきゃね。
大好きだよ、誰よりも愛してる。
命より大事だから、母様といてね」
「うー! うひゃ」
リュシアンの方が辛いはずなのに、慰める様に笑ってくれていた。
「おいおい、どうした事だ、これは!
リュリュは無事なのか!?」
先触れもなく、ノッカーも鳴らさず入ってきた人達は想像通りの両陛下と王子達だった。
さっきの魔法陣の展開で、応接室の家具や観葉植物なんかが、グシャグシャになり散らばっていて側から見たらまるで台風一過の様だった。
「シアン! 無事なの?」
「エル! 兄様が来たから安心して!」
口々に僕らを心配してくれる言葉を聞くと、彼らが僕とリュシアンを家族だって受け入れてくれてるのは間違いないと思えた。
そして両陛下が近づいて来た時、リュシアンの策略が発動した。
「うぁああああん!!
ぎぃやあおうぁ!」
顔を真っ赤にして泣き叫び、初めて陛下に向かって手を伸ばすリュシアンのあざと可愛い攻撃が炸裂した。
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