春の訪れ…?

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春の訪れ…?

もうそろそろ有華が来るかな、という頃、ハイツのゴミステーションにゴミを出すため下に降りた。 「立木さん」 後ろから声を掛けたのは春野さんで、彼は大きなリュックを持っていた。 「今日も美味しかったです、ありがとうございました。お出掛けですか?」 「実家の方へ、ちょっと…」 爽やかな声だけど少し語尾を濁したのは、気の進まない帰省なのかなと勝手に想像する。 「月曜のお弁当が約束出来ないので、また連絡します」 「いえ、わざわざそんな…なくても大丈夫ですから」 「でも作ったらひとつは無駄になるので」 「ああ…いつも二人分のお弁当で配信されてるから?英語とかタイ語とか…春野さんは私の周りにいないタイプの方で…ちょっと不思議な感じです」 私が腕捲りしていたブークレニットの袖を下ろしながら言うと 「よく知らない者からの食事は怖いですか?」 と思いがけない質問が落ちてきて、視線を上げる。 「今度ゆっくりと食事に誘います。僕のこと、ちゃんと知って欲しいので」 「あ…っと…」 知らないのは怖いのかもしれない。普通は…私だったら怖がっていたはずがもう二度も食べちゃってる。生活の全く見えない相手でないことは安心材料かもしれない。 でも…改めて食事とか言われるとめんどくさいと思ってしまう。これが非恋愛体質の一部分らしい。
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