4498人が本棚に入れています
本棚に追加
/126ページ
春の訪れ…?
もうそろそろ有華が来るかな、という頃、ハイツのゴミステーションにゴミを出すため下に降りた。
「立木さん」
後ろから声を掛けたのは春野さんで、彼は大きなリュックを持っていた。
「今日も美味しかったです、ありがとうございました。お出掛けですか?」
「実家の方へ、ちょっと…」
爽やかな声だけど少し語尾を濁したのは、気の進まない帰省なのかなと勝手に想像する。
「月曜のお弁当が約束出来ないので、また連絡します」
「いえ、わざわざそんな…なくても大丈夫ですから」
「でも作ったらひとつは無駄になるので」
「ああ…いつも二人分のお弁当で配信されてるから?英語とかタイ語とか…春野さんは私の周りにいないタイプの方で…ちょっと不思議な感じです」
私が腕捲りしていたブークレニットの袖を下ろしながら言うと
「よく知らない者からの食事は怖いですか?」
と思いがけない質問が落ちてきて、視線を上げる。
「今度ゆっくりと食事に誘います。僕のこと、ちゃんと知って欲しいので」
「あ…っと…」
知らないのは怖いのかもしれない。普通は…私だったら怖がっていたはずがもう二度も食べちゃってる。生活の全く見えない相手でないことは安心材料かもしれない。
でも…改めて食事とか言われるとめんどくさいと思ってしまう。これが非恋愛体質の一部分らしい。
最初のコメントを投稿しよう!