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2ズルズルすする
つい先日、風呂好きな夫の望みを全部組み込んだバスルームのリフォームが終わり、広いバスタブにジャグジーがついたかなり豪華な仕上がりになった。
明るくてきれいなバスルームをみたとき、息子がわっと火がついたように泣き出す。
どうした、と夫がバスタオル一枚でやってくると息子はこう言った。
しわくちゃでガリガリの、知らないおじいちゃんがお風呂にはいって、ニヤニヤしていると。
夫と同じ風呂が好きな息子が、妙なことをと思い熱でもあるのかと体温計をリビングまで取りに行こうとしたら夫は「あはは、そんな必要ないって」と至って気楽に切り出す。
「俺がまだ小さい頃に亡くなったひいじいさんがさあ、銭湯の一番風呂が大好きだったのさ。きっとリフォームした風呂の具合を確かめたくて、出てきたんだろうよ。よく見ているから間違いない、ひいじいさんも本当に風呂好きでさあ」
そう語る夫を、息子が遮る。
「おじいちゃん、真っ赤なお湯をためて、ずるずる飲みながら入っているよう。おいしい、おいしいって言ってるよう」
夫も私も、しばらくは銭湯へ通うことにした。
業者より、お祓いをしてくれる神社を調べる必要があるようだ。
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