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七月七日。
人はその日を七夕と呼ぶ。
「今年もまた、たくさんの願いごとが流れ着いたわね」
織姫が隣の彦星に言う。
天の川には、短冊がくくりつけられた笹が次々流れてくる。
天の川の下流一角には笹の集積所があり、笹の一本、短冊一枚残さずに集積する。
「どの願い事も叶うといいね」
「私たちが会えるよう、願ってくれてる優しい人たちですものね」
そう言って織姫と彦星は、微笑んだ。
天界も地上の人界にならい、様々な仕事の自動作業化を図っている。
機織り、牛飼い、笹の集積など、今まで人が行っていた作業も自動となり、人の作業が不要となった。
織った布の生産、管理、販売、売上や、牛の管理など、あらゆる作業をロボティックプロセスオートメーション(仮想知的労働者)に任せた。
その結果、二人が離れ離れに働く理由はなくなった。
織姫と彦星は、会いたい時にすぐに会えるようになった。
だけど、それは天界だけの秘密だった。
七夕だけは、二人のお仕事日。
集積された笹が、願い事とともに、綺麗な星になるのを見届ける事。
集積された笹が、星となって消える前に見に来た二人が、一枚の短冊に目を向けた。
「ひこ星とおりひめが、会えますように。みんながしあわせになりますように」
あどけなさが残る文字の短冊。
二人が、微笑み合う。
二人が見届ける中、たくさんの笹と短冊が自動で、次の作業工程に入った。
笹と短冊が光を放つ。
あっという間に、粉々になったかと思うとキラキラと輝く星になった。
短冊のいくつかは流れ星となった。
流れ星となった願いは、叶うと言う。
織姫と彦星は満足そうに、たくさんの星を眺めた。
彦星が織姫の手を取り、握って言った。
「ずっと、一緒にいましょうね」
「お母さん、流れ星!!!」
夜空を見上げていた親子は流れ星を見つけた。
「まぁ、きれいね」
親子は楽しそうに、夜空を眺めた。
今年の七夕は、特に多くの流れ星が観測されたようだ。
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