ト書きのない文学シリーズ2 美術館にて

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学芸員(女性)「ようこそ、マニアック秘宝館へ」 客(男性)「ええーっ!こ、ここ秘宝館なんですか!」 学芸員「驚かれました?」 客「てっきり、華北玄斎美術館とばかり」 学芸員「華北玄斎美術館です」 客「ですよねぇ。いやぁびっくりドンキー」 学芸員「サプライが流行っていると2ちゃんねるで見ましたもので採用してみましたが、驚かれてよかったです」 客「そこで情報取るのはやめた方がいいと思いますよ」 学芸員「まずは今年、最初のお客様ということで、大変嬉しく思っております」 客「ええーっ!もう半年過ぎてますけど、これまで入館者、ゼロ?」 学芸員「はい、2ちゃんねるでの告知が足りないのかましれないですね」 客「だからそこじゃなく」 学芸員「申し遅れました。わたくしここの学芸員をしております、二階堂辻ヶ丘宗近川聖東鐵公子(にかいどうつじがおかかわひじりとうてつきみこ)と申します。長いので苗字の、二階堂辻ヶ岡宗近川聖東鐵で構いません」 客「なぜあえて苗字の方を」 学芸員「本日は死ぬほど暇ですのでガイドさせていただきます」 客「ラッキー!って言っていんですかね。すごく嬉しいです。僕は華北玄斎先生の大ファンでして」 学芸員「稀有です!極めて稀有です!!」 客「あなたがそれを?」 学芸員「ご存知かもしれませんが、それではまず、華北玄斎のプロフィールをご案内させていただきます」 客「よろしくお願いします」 学芸員「華北玄斎は、1956年鳥取で生まれ、1996年鳥取で亡くなりました。では、作品の方へ」 客「めちゃざっくり。Wikipediaの一行目しかない」 学芸員「最初の作品。猫の交尾、は華北の代表的作品のひとつです」 客「これは知っていますよ!もちろんレプリカですけど部屋に飾ってますから。なんというか、稚拙なように見えて奥深く、一見、小学生でも描けそうでいて」 学芸員「華北が小学生の時に描かれたものです」 客「あ、ほんとに小学生の時に描いたんだ。納得」 学芸員「次の作品、カブトムシも華北の代表作です」 客「これもいいですよねぇ。シンプルに描かれはいるけれど、そこに生命の輝きが溢れていて。小学生でも描けそうでいて」 学芸員「華北が小学生の時の夏休みの課題で、がんばりましたで賞をとったものでございます」 客「あーこれもそうなのか。しかも、がんばりましたで賞かぁ、けっこう他にもたくさんいたんだろうなぁ」 学芸員「次の作品は」 客「あのう、ちなみにですけど。ここには小学生以降に描かれた作品ってあるんですか?」 学芸員「えー、えー、えーと、うーんうーん」 客「こりゃないのかな」 学芸員「ありました!」 客「よかったぁ。小学生の夏休みの課題を見に来る親か、って自分に突っ込んでいたもんで」 学芸員「但し、倉庫の奥深くにあるので、探すのに半日はかかりますけど」 客「じゃあいいです。親になる覚悟を決めました」 学芸員「ありがとうございます。もしそれを見たいと言われたら、すんごくめんどくせー客だなあなぁと床に唾を吐くところでしてので」 客「あなたの正直さは人に殺意を芽生えさせますね」 学芸員「ありがとうございます」 客「なんのお礼だろ」 学芸員「彼はオブジェも制作しております。次の部屋でご紹介いたします」 客「なんとなくの予想ですけど、それって、粘土で動物とかたわいもないものを作っているやつですか」 学芸員「主に、うんこですね」 客「うんこ?」 学芸員「ご存知ありませんか、うんこ」 客「ユニバーサルスタンダード」 学芸員「これは3歳児の頃の傑作です」 客「・・・そこまでさかのぼります?というかこれ、本当によく見るタイプの幼児の粘土細工ですよね」 学芸員「よくご覧ください。このうんこ。何か気づかれないですか」 客「うーん、よくわからないですねぇ」 学芸員「リアルじゃないですか」 客「ま、確かに」 学芸員「これ、素材は粘土じゃないんです」 客「おっとぉ、もしや」 学芸員「おしゃる通り!モノホンを手でこねて作ったものなんです」 客「僕は何も言ってなかったけど。これリアルなやつか、うんこでうんこを作る。確かに常人ではない!」 学芸員「このうんこシリーズは約1万点あり、空調のない倉庫で管理しています。今ならそちらも特別に鑑賞できますが、行かれます?」 客「けっこうです。あのう、トイレどこでしょうか。ずっとうんこの話してたら、排便感が」 学芸員「トイレはこの先、左です。あ、いまならご自身の排便をこねてうんこをつくるという特別イベントをしておりますが、いかがです?」 客「するかーい!」
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