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「母が……母さんの調子がよくないんだ」
「え! 美奈子(みなこ)ママ、病気なの⁉」
「いや、病気というわけじゃないのだけど……」
彼は逡巡した後、口を開いた。
母親は更年期障害の症状が重く、気分が塞いで家に引きこもることが増えているそうだ。体調が悪いときは寝込むこともあり、そうでないときでも以前のように明るく溌溂とした様子はない。
「そうだったんだ……全然知らなかった」
在外公館勤務で何年も海外にいたため、彼の母親とは顔どころか話もできていない。
彼女は自分には息子しかいないからと、私達姉妹を実の娘のようにかわいがってくれた。私達も彼女のことを『美奈子ママ』と呼んで慕っている。
せっかく帰国したのに、忙しさにかまけてずいぶん不義理をしてしまった。
「休みの日はなるべく外に連れ出すようにしているのだけど、それも断られることがある。平日は俺も父さんも仕事があるから難しい。だからせめてなにか明るいニュースでもあれば、気持ちが上向くかと思って」
「それで結婚を……」
「ああ。以前から度々結婚のことを言われていたからな」
だからと言ってそんなに慌ててお見合いなんてしなくても。
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