言えない名前

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「アンソニー、ごめんなさいね。 こんなことになってしまって…」 「何を言ってるんだ。 君はそんなこと気にしないで、ただ元気になることだけを考えておくれ。」 「アンソニー…私はもう…」 「マリア!駄目だよ、そんなこと言っちゃ… 君は体調が悪くて、弱気になってるだけなんだ。 だけど、必ず良くなるから… ね、マリア…君が元気になったら、またあの湖にピクニックに行こうよ。 君のサンドイッチ、うまいんだよな。 また食べたいよ。」 「……アンソニー……」 マリアの口元に儚げな笑みが浮かんだ。 「じゃあ、また明日来るからね!」 「いつもありがとう、アンソニー…」 病室を出た途端、アンソニーの顔からは明るい笑顔が消える。 今にもこぼれ落ちそうになる涙をこらえ、アンソニーは足早にその場を立ち去り、大通りの教会へ向かう。 毎日、毎日、アンソニーはマリアの無事を祈った。 誰よりも真剣に、誰よりも愛を込めて、アンソニーは、マリアの命が長らえることを深く祈った。
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