01.prologue【Side:長谷川 将継】

1/1
586人が本棚に入れています
本棚に追加
/312ページ

01.prologue【Side:長谷川 将継】

 ――いつか誰かのものになるくらいなら、今ここで私のものにしてしまおうか。  そんな雄特有の独占欲をグッと理性で抑え込みながら、私は眼前の熱に集中する。 「あ、将継(まさつぐ)さ……っ、ダメ……」 「我慢しなくていい。素直になりなさい、深月(みづき)……」  言いながら、あいた手で彼の視線を(さえぎ)るように目隠しをして世界から隔絶してやれば、そのことが怖くてたまらないのだと訴えるみたいに深月の身体が小さく震えた。 「大丈夫だから……。私の手だけに集中して?」  そのことを申し訳なく思いながら深月の耳元。やや低めた声で優しく(ささや)けば、彼の下腹部へ手を伸ばした私の手に、深月のほっそりした手がまるで(よすが)を求めるみたいに縋りついてきた。  自分より一回り近く歳が若いにしても、身長の割に華奢(きゃしゃ)過ぎるだろう彼の身体は、背後から抱えるように包み込むだけで、私の腕の中にスッポリと収まってしまう。  身長差自体は十センチもないはずなのに、成熟した成人男性と呼ぶには余りにも未熟に思える深月の薄い身体は、ほんの少し力加減を間違えようモノなら簡単に折れてしまいそうだ。  なのに、私の手の中で可愛らしく()ち上がっている彼のモノだけは、やけに力強くいま私の腕の中にいるのは同性なのだと存在を主張してくるから。  ここだけは、手加減なし。存分に可愛がってやってもいいのではないかと錯覚してしまう。  すでに先走りでかなり(ぬめ)りを帯びた深月の可愛い雄芯は、ゆるゆると緩急を付けて(しご)くだけでぬちぬちといやらしい水音を立てた。 「やっ、ダメっ。将継(まさつぐ)さっ、出ちゃ、っ……」  時折鈴口を引っ掻くようにして、まるで自分のモノにするように少し乱暴に可愛がってやれば、深月がたまらないみたいに吐息を乱す。 「()けよ、深月。意識を飛ばしても大丈夫だ。がちゃんと捕まえていてやるから」  妻に先立たれて五年――。  久々に情欲で感情が(たかぶ)って、私は自分のことを〝俺〟と称した。
/312ページ

最初のコメントを投稿しよう!