霧の出る日

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人気(ひとけ)のない場所でキャンプをしようと、山の中の湖を目指し、歩き始めて三十分ほどの所で、突然の霧に二人は足を止める。 「マじかよ……。どうする?」 「もうここで良いんじゃない?」 不安そうに振り返った涼に、里穂が提案した。 「そうだなぁ、ちょうどここ拓けてるし、川もあるから水も確保できるし、じゃあここにテントを張ろうか」 「うん」 二人はテントを張ると、石と枯れ木を拾って火を起こし、予定より早めの夕食を作ることにした。 せっかくのキャンプだったのに、夜になっても霧は晴れない。 「まぁ、逆にこういうのも想い出に残るよ」 「そうだね。そろそろ寝ようか」 テントに入って寝転がると、里穂はスマートフォンを取り出した。 「あれ? さっきまで使えてたのに電波が……」 「そうなの? あ、俺のもだ」 「でも、美香からのメッセージは受信できて……えっ?」 里穂が眉を曲げる。 「どうした?」 「美香がね、今私たちが来てる辺りに、入ったら生きて出られない呪われた村があるらしいけど、大丈夫かって」 「なんだよそれ。アイツ絶対嫌がらせだろ」 「そうよね? だって村なんてなかったし」 「ああ、あっても入らなきゃいいんだろ?」 「そうよね」 「なぁ、それより」 「うん」 涼は里穂を引き寄せて唇を重ね、二人は激しく互いを求めあい、そして眠りについた。
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