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男の半分はエロでできている。それは生殖本能によるもので、極めて健全な状態だ。その村に向かう車中、俺は脳内でそんな言い訳を繰り返していた。
「おっ、案内板だ」
高速を下りて三十分。口コミだけを頼りに田舎道を走っていたから、安堵の息がもれる。
篦亮吾䒳村
←
道端の看板に従い、俺はハンドルを左に切った。
もともと、俺が調べていたのは「呪われた村」だった。行けば呪われるとSNSで噂の心霊スポット。でも情報を集めるうちに、もっと魅力的な村を見つけてしまった。村名が難読なせいか「おもてなし村」で通っている、秘密の桃源郷だ。
理想の女性に必ず出会える♡
個室で朝まで至れり尽くせり♡
いくらオカルト好きでも、せっかく行くなら「呪われた村」より「おもてなし村」がいいに決まってる。俺は次の休日、いそいそと車に乗り込んだ。
「ようこそいらっしゃいませ」
村で俺を出迎えたのは数人の美女だった。みんな違ってみんな可愛い。中でも一番好みの女がスッと前に来て、車を降りた俺の手を取った。
「どうぞ、私の部屋へいらして?」
吸い込まれそうな黒い瞳、細い体に豊かな胸と尻。どストライクだ。俺は彼女に導かれるまま、点在するコテージの一つに入った。
「ふふふ」
扉を閉めるなり、女が笑いながら俺に抱きつく。慣れた手つきで服を剥かれ、体中に口づけをされた。
積極的な女も悪くない。なめらかな肌に手を伸ばそうとして、ハッとした。
体が動かない。
目を落とすと、俺の体は透明な糸でぐるぐる巻きにされている。
「な……っ!?」
「ふふ、ふふふ、うふふふふ」
女の美貌がぐにゃりと歪み、目の前でグロテスクな虫の顔に変わった。細く長い脚が俺を包み込む。巨大な女郎グモに変化した女は、八つのつぶらな目を爛々と輝かせ、膨らんだ赤い腹を俺の股間にこすりつけた。
「朝までたっぷり、搾り取ってあげるわ」
鎌のような黒い毒牙がギラリと光る。
「そのあとは全部、私の養分にしてあげるからね」
【了】
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