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使者との再会
4階で降りると、第2の社会人生活の始まりだね。
チーン…ちょっと早く着きすぎたかな?自分で事務所のドアを開けられるのかな?
転職初日、一人ぼっちのエレベーターが止まった瞬間、それまでの希望と期待が不安に変わる。それでも待ったなしとばかり…自動的にクリーム色のエレベーターのドアが開くと、視界も自動的に広がるワケで…一歩を踏み出さないワケにはいかない。
たった一歩で足を揃えて立ち竦んだ私がフーッと小さく息を吐くと
「…史華?」
若干低めの声が私を呼んだ。誰っ?
不自然に呼吸を止めて声の方を見ると…げっ…嘘でしょ?何?なに?ナニ?どういうこと?
「危ないよ?」
思わず後退しエレベーターのドアに背中をぶつけた私の腕をそっと持った男は、そのまま自分に引き寄せる。
「ちかっ…ぃ…って……なんでいるの?」
「普通に出勤」
「……まさかの…カーリース社?」
「そ。それよりさ、史華…」
至近距離で視線を交わらせる男を睨むが、彼は涼しい目元を緩める余裕を見せて続けた。
「出来るようになったのか?」
それは一気に10年の時を巻き戻す問いかけで、私は巻き戻されまいと小さく叫んだ。
「出来るわよっ…っ…ん…」
小さな叫びは男の唇に吸い取られ、片手は私の腕を掴んだまま…男のもう片方の手が私の後頭部に添えられた。
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