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エリザ
エリザは今日も海面にあがって、海にせり出したお屋敷のベランダを見ていた。
エリザが見ているお屋敷のベランダにはいつも物憂げな青年が椅子に腰かけ、長い時間海を眺めている。
エリザは海王の末娘。13歳。人間に呼ばせると人魚姫という事になる。
上半身は人間。下半身はお魚。でも、顔はおとぎ話の人魚のように美しい人間のような顔ではない。
耳は尖り、赤い吊り上がった目をしている。そして、口は魚の様に耳まで裂けている。声は海の中で反響しやすい様に超音波のような声で話す。
でも、人魚はそれがスタンダードなのでエリザは特に何とも思ってはいなかった。
海の中にもそれは素敵な青年の人魚立ちがいるのだが、エリザは、どの人魚に求婚されても、お屋敷のベランダにいる青年が気になって仕方がないのだ。
青年の名はマーリン。美しい顔立ちの人間。でも、いつもとても悲しそうに海を見ている。
エリザはマーリンを見ると何か懐かしいような、もの悲しいような気持ちになるのだ。好きと言うのともまた違うのだが、何故か気になるのだ。
おとぎ話の様に足が欲しいとも思わないし、ましてや人間と人魚は顔が違い過ぎるので、種族の違いもよくわかっている。
それでも、何故か、マーリンがとても気になるのだった。
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