11. 二度と会えない

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「お前妊娠中なんだから、一人で抱え込んだら身体に悪いぞ?」 「わ、わかってます……」 「俺でもいいし親でも友人でも、吐き出すだけでも楽になるんだから」 「…………」 部長はそう言ってくれたが、椿から離れる事を望んだのも自分だし、それに至った全ての経緯を話したところで、責められるのは繭か椿。 一人で育てられる?責任持てる?と自問自答し続ける日々なのに、更に追い詰められるような事があったら心を保てる自信がない。 それに椿の事をよく知らない人の、椿を責めるような言葉を聞かされるのは、繭にとってはもっと耐えられないと思ったから。 「本当に、大丈夫ですよ……」 「……里中」 そんなつもりはなかったけど、胸の奥がちくりと痛んだそれは、嘘をついた時に感じるものと似ていて。 あの日以降、小さな痛みが徐々に積み重なっていたことに、繭は気付かないフリをした。 だから、ついにそれは起こってしまう。 「じゃあ産休時期はこの辺で調整して……」 「っ……」 「里中?」 「……部長、ちょっとお腹……痛くて」 「えっ!?」 座っていた繭が突然前屈みになりお腹を抱える仕草をしたので、向かいに座る部長は慌てて立ち上がり繭の肩を支えた。 痛みで表情は歪み額には汗が滲み出てくると、さすがの繭も初めて感じる痛みに良くない状況であると理解する。 「おい病院行くぞ!救急車!?いや社用車出した方が早い!」 「……っすみません」 「エレベーターまで歩けるか!?」 「はい……」 幸い面談室の目の前にエレベーターがあり、部長に支えられながらすぐに乗り込む事が出来た繭。 一階に到着するまでの間、痛みの波に襲われながらも繭は必死に耐えており、部長はスマホを取り出して病院までのルートを検索しようとした。
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