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肯定
僕と綾香さんと執事らしき人の3人で連絡先を交換した。なぜ3人かはこの際もういい。
あの日以来、彼女に会うことはできていないが文字でのやりとりは続いている。
どこの大企業のどんな続柄かなんて聞いていないから、後で知ったら驚くんだろうな、僕は。
彼女はあのとき否定したけど、僕は肯定する。綾香さんがれっきとしたお嬢様であることは間違いないということを。
綾香さんは、家庭教師をつけて勉学のみならず、多種多様な習い事をしているらしい。僕が日常から抜け出したいと思うよりも強く、彼女は外を見たかったのだろう。
あの日の僕の衝動や熱中症は、すべて必然だったと思いたい。そして、彼女が自由に行動できるようになったら、すぐにでも会いたい。
夏休みも終わり、暑い日々がまだまだ続く中、僕は1人学校の校庭に出てきた。
ちょうどここが真ん中あたりかな。
彼女の秘邸は東の方向か。よし。
「綾香さーーん!」
彼女への想いを込めて名前を叫んでみた。届くはずのない叫びでも、心に届けと声にした。
僕は彼女に恥じないよう受験勉強に捲りをかけて、レベルアップを狙ってみよう。
あと1歩の進路を諦めムードで過ごしてきたけど、今からでも間に合う気がしてきた。
この努力を成さなかったら、多分……綾香さんにはもう会えないと感じた。
それがすごく辛くて怖くて切なくて。僕の努力で隣を歩ける男になれるならどんな努力だってしてみせる。
僕の心を変える出会いをくれた綾香さん。
ねえ、君はいま何を想う?
僕は君を想っているよ。
この運命を、信じてる!
おわり
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