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FLASH
拷問を受けるってのも楽じゃない。この痛みがいつから続いているのか、時間の感覚を失った。呻き声を上げ続けた喉が灼けて仕方ない。
拷問室ってのは紳士の社交場じゃない。惨めな声を上げてやる方がいい。こいつはそろそろ吐きそうだ、と期待を持たせてやる方がいい。拷問室に手下どもを集めておく。追跡が手薄になる。そうすればあいつは、俺を捨てて、振り返りもせず、逃げ延びる。あいつはそういう男だ。
水が欲しい。意識を飛ばしたフリをするか? 「そういうのは雑魚のやることだ。すぐにバレる」とあいつなら鼻で笑うだろう。
純粋な痛みに慣れることはない、ってのが俺の持論だ。だが人間に踏み躙られることには慣れる。
だから俺はまだあいつの時間を稼いでやれる。飲んだくれの両親の家から勝手に飛び出した。俺みたいなゴロツキにも軍にいた時期がある。新兵いじめ。戦場。面倒になってトンズラした。だがおかげさまで、蔑んだ顔と暴力に傷つく心の持ち合わせがない。
「そろそろ吐け。お前らの『ボス』はどこに潜伏してる?」
始めのうちは返事をしてやっていたが、今は喉が痛むので面倒だ。
「ハァー。こんなもんか。カメラは」
「はい!」
大仰なカメラを抱えた手下の登場。拷問の記録用のカメラを常備してるファミリーなのか!?
俺の顔を、両手を、両足を、撮影する。フラッシュが焚かれる。そのたびに、霞んだ視界が真っ白に灼ける。
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