第1章 利害が一致したので、結婚します

22/25
524人が本棚に入れています
本棚に追加
/25ページ
「俺と、結婚してくれませんか?」 「……はぃ?」  だが、その驚きなんて可愛いものだった。……今、彼はなんと言ったのだろうか? (聞き間違いじゃなかったら、結婚してほしいって……)  いや、絶対に間違いなくそう言った。唯奈が生み出した幻聴という可能性は、ほぼゼロだろう。 (というか、運命ってそういう運命!?)  唯奈を運命の相手だと、涼人は捉えたのだろうか? そんなもの、まやかしだろうに。  だって、唯奈は平凡な女だ。特別美人というわけでも、可愛いというわけでもない。 「い、いやいや、あの、ですね……。結婚なんて、こんな勢いで決めるものじゃないですよ……」  ぶんぶんと首を横に振って、そう言う。だって、そうじゃないか。もしも結婚して、やっぱり合わないとなったら。何年も付き合った恋人とさえ、あっという間に破局するのに……。 「それは、わかっています。ただ、俺もいろいろと切羽詰まっていて……」  涼人が唯奈の手をぎゅっと握って、そう言う。……どうやら、彼も訳ありらしい。
/25ページ

最初のコメントを投稿しよう!