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 来春、シリとフネンの一部を乗せたバッタ船が元いた星に向かうことが決まった。希望すれば誰でも乗れるのだという。 (トマは帰らないの?) (俺はもういい) (そっか。俺と一緒だね) 「春野、スマホが鳴ってるぞ。早く出ろ」  春野は富士田から少し離れてスマホに耳を当て、相槌を打って、早口で何か喋ると、振り返って言った。 「富士田さん、奥さんからで、赤ん坊が生まれそうなんだって。行っていいッスか?」 「そりゃ、行かなきゃな。仕事どころじゃないだろ。早く行け。あとは俺がやっておく」  俺がそう言うのを知っていた? いや、感じていたのか? 最近では声を出して喋ると、春野なのかシンなのかの区別がつかない時もある。一目散とばかり、振り向きもせず駆けていった。  俺達フネンに身代わられている間の記憶はうっすらとではあるが、その人間の記憶にも残る。俺はフネンだが、これでも俺なりに人として考え、人になろうとした。多分、富士田自身もそのことに気づいていて、不思議な感覚だったのではないか。富士田に伝わるかはわからないけれど、声に出して言ってみることにする。 「富士田、今までありがとう。それから、ごめん。多分、俺の残りの時間はそんなにはない。最期まで富士田でいさせてほしい。勝手なお願いだけれど、これからもよろしく!」                         〈了〉
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