軽くて重いソーダ水

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軽くて重いソーダ水

「今日は何飲むの?」  自販機の前で代わり映えのしないラインナップを見つめていると、背中から声を掛けられた。 「何だって良いでしょ」 「別に隠さなくたって良いだろ。うーん、炭酸水のレモン!」  本当はそれにしようと思っていたけれど、山田が言ったからそれにしたみたいに思われるのもしゃくに障るので、私はその隣のプレーンな炭酸水のボタンを押した。選ばれなかったレモン味たちのランプが一斉に消える。 「レモンじゃなかったかぁ。惜しいっ」  山田がわざとらしく指を鳴らすと同時に、自販機はガタンと大きな音を立てペットボトルを落とした。腰をかがめそれを取り出しながら「山田がレモンにすれば良いじゃない」と言ってやる。 「俺はコーヒーなの」  隣に回り込んできた山田は、大きい方のブラックコーヒーのボタンを押して、アプリでピロリンと会計をした。同じように重いペットボトルが落ちてくる。  炭酸水を持って窓際のカウンターに立つと、山田もその横に並んできた。他にも空いてるんだからそっちに行けば良いのにと思うけれど、別に実害があるわけではないので好きなようにさせておく。そもそもこのカウンターだって私だけの場所じゃないし、山田の自由だってあるしね。
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