軽くて重いソーダ水

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「今日午後から会議なんだよね。だりぃ」  山田はゴクゴクと喉を鳴らしコーヒーを飲みつつ言った。 「何の会議?」 「月初の販売拡大(ハンカク)」 「毎月のことじゃん」  私は正面を向いたままペットボトルのキャップを開ける。炭酸の抜ける音が想像以上に大きくてびくりと肩を竦めると、ビビりすぎと小さく笑われた。私はその反応に唇を尖らせつつ炭酸を飲む。 「販拡だけなら良いんだよ。今月の目標はこれー、だからみんなで頑張りましょーねーって」  味気ない炭酸水が喉を落ちる。やっぱりレモンにすれば良かった。無果汁の奴だけど身体はその酸味を欲している。山田が来なければレモンを飲んでたのに、と理不尽な怒りの矛先を隣の長身に向けた。 「今月は、っていうことはだよ」  山田はカウンターの上でペットボトルをゆらゆらと弄びながら、愚痴を続ける。 「もれなく先月の反省が付いてくる訳さ。俺、先月悪くて。絞られるの決定なんだよ」 「それも毎月のことなんじゃないの?」 「言ってくれるね、網代(あじろ)。渉外のホープ捕まえて」 「ホープとか。笑えるんだけど」
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