12話 大事な人【Side 倉田亮】

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「待て――!」 目の前を走る人物に叫ぶ。 僕から逃げるように車道に飛び出る。その後を追って僕も車道に出た。 プー! というクラクションの音がした。 音のした方に首を向けた時、大きなトラックが見える。 トラックが急ブレーキをかけるが、僕は跳ね飛ばされた。 道路に叩きつけられた時、体から命が抜けていくのを感じる。 ああ、僕は死ぬのか。 そう思った時、夕夏さんを守れなかった激しい後悔に襲われる。 僕は選択を間違えた。 夕夏さんからの連絡を待つだけではダメだった。もっと積極的に夕夏さんの問題に関わるべきだった。 唐突に母が書いた「星のじかん」を思い出した。お姫様がやり直しの魔法を唱え、強く時間が戻る事を願った時、奇跡が起きて、最愛の王子様が生き返り、二度目は王子様が死なないルートをやり直すという話だった。 確か、やり直しの魔法の言葉は……。 「ループ」 時間の神様、もう一度、夕夏さんと出会った時からやり直させて下さい。そう強く願った瞬間、世界が光に包まれた。 それが一度目の人生の最期だった。
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