*03*

2/2
6人が本棚に入れています
本棚に追加
/22ページ
図書室の司書担当の日は、朝が早い。 登校してすぐ、図書室の鍵を職員室で借りて、図書室を開けるところから始まる。 開けて終わりではない。 朝休みに本を借りたい人がいるかもしれないからと、ホームルームまで貸出カウンターにいなければならない。 図書室を離れる時は、鍵をかけて職員室に返却する。 以前は開放しっぱなしだったらしいけど、本が盗難に遭ったことがあるようで、戸締りをするルールになったのだとか。 めんどくさいルールだなと思うことはあるけど、本が盗まれるのは嫌だから、毎回きちんとルールを守っている。 昼休みも、朝と同じ要領で図書室を開放し、カウンターで貸出業務をする。 5時間目の授業が始まる前に戸締りをして、鍵を返却し、仕事はおしまい。 1日に2回の業務だけど、それなりに責任感のある仕事だし、何より大好きな本に触れられるから好きだ。 一ノ瀬くんも、もう少しサボらずに図書室に来てくれたらいいのに。 竹井さんと仲良くなって1週間。 また図書室の司書担当の日がやって来た。 昇降口で靴を脱ぎ、上履きに履き替える。 何気なく、一ノ瀬くんの下駄箱に目を向けると、白地に金色のラインが入った〈神速〉のスニーカーが入っている。 「…え」 スニーカーが入っているということは、つまり一ノ瀬くんは学校にいるということだ。 今日はサボらずに来てくれたんだ。 珍しいと思うと同時に、苦手意識はあれど来てくれること自体は嬉しく思った。 ――ていうか、アンタも言い返せよ。 ――言われっぱなしで悔しくないの。 一ノ瀬くんに言われた言葉が脳裏を過ぎる。 喧嘩をした訳じゃない。 ただ一方的に、私が苦手意識を持ってるだけ。 でも……。 どんな顔して会えばいいの……?
/22ページ

最初のコメントを投稿しよう!