ある交差点の出会い男と女

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ある交差点の出会い男と女

【1話】 このお話は、ある二人の若い男女 の出会いが、 交差する所から始まる。 人通りの多い交差点の横断歩道。 一人の若いOLが下を向いて歩いている。 信号は青から赤に変わる。 OLはそれに気づかず、横断歩道を そのまま歩く。 「あっ!危ないっ!」 若い男の大きな声が、OLに向かって叫ぶ。 その声に顔を上げたOLは、 数台の車のクラクションの鳴り響く中にいた。 彼は、 青ざめて立ち止まる彼女のその腕を強くつかむと、 歩道まで引き戻した。 「大丈夫ですか?」 若い男はOLに聞く 「‥‥」OLはまだ車に囲まれた 恐怖に震えて声も出なかった。 「しばらくしたら、落ち着きますよ。」 そう言うと、若い男はその場から立ち去った。 しばらくして落ち着きを取り戻したOL。 自分を助けてくれた若い男の姿を探したが、どこにもいなかった。 「お礼を言い忘れてた。」 OLは、そのことをとても気に掛けていた。 一カ月後、 OLは自分を助けてくれた場所にいた。 (彼に会って、お礼を言わなくてはいけないわ。) やっと彼に会えたのは、 彼女がもう会えないとあきらめかけた その時、彼の姿を見つけた! 彼女は勇気を出して、 彼の肩越しに声を掛ける。 「あ、あのっ、すみませんっ。」 彼女はやっとの思いで、彼を呼び止めた。 「えっ?」 振り返った彼は、 彼女のことを覚えていないようだ。 「何か?」 と彼女に聞く 「た、助けてくれた人ですよね。 あ、あの横断歩道で‥‥ そ、それ私ですっ。」 彼女は彼に言うと 「えーと、そうでしたか?」 彼は思い出せないようだった。 「お礼を言い忘れていたので、 あの時はありがとうございます。 呼び止めてすみません。」 それだけ言うと顔を少し赤らめて、 彼女は歩いている人の中に消えていった。 後に残された彼は、 必死に彼女の言葉とその出来事を思い出そうとしていた。 そういえば、 一ヶ月前そんなことがわずかな記憶にあるだけだ。 彼女はお礼を言うだけのために、この場所にいたのか? その日から、 彼は彼女のことが気になり始めた。 自分で言うのは何だけど、 髪はボサボサ、スーツはヨレヨレおまけにクツは泥だらけ。 こんな男を探して、お礼を言うために待っていたなんて‥‥。 (ただ一度、助けただけなのに‥‥。) 彼女の気持ちがうれしかった。 (彼女に会いたい) そして彼は思った。 (彼女に会って何を話す? 自分は、人と話すことが好きではない。彼女は知らない人。 自分が声をかけて驚くかもしれない。) 彼が考えに考えて出した答えは? 彼女と再会してから数週間後。 彼は彼女を探して横断歩道にいた。 彼はやっと彼女を見つけた。 「あ、あのっ。」 と彼女の肩越しに声をかける。 「えっ?はい?」 彼女が振り向く。 「ここで助けた者です。 あ、あのボクの連絡先です。 どうぞ。」 小さな紙を彼女に手渡すと、 彼は顔を赤くして小走りに立ち去る。 (これ、えーと‥‥。) 彼女は戸惑っていた。 【2話】 彼は彼女の連絡を待った。 来る日も来る日も。 (もしかして、明日は彼女から連絡があるかもしれない。) 彼のわずかな望みだった。 それから一週間後。 彼の居る大手の会社(トパーズ商事)の 社員食堂の片隅のテーブルのイスに、彼の姿があった。 彼はソワソワと落ち着かない様子で、彼女の連絡を待っていた。 (もう昼休みの時間も終わりか‥‥。今日もダメだった。) とその時、彼のケイタイが鳴る。 「ピローン」 彼女だっ! 彼はあわててケイタイを耳にあて、大声で叫んでしまった。 「も、もしもしっ。」 ケイタイから声は聞こえない。 よく見ると、彼女からのメールだった。 (あっ、間違えた。メールだ。) 彼は震える手で、そっとメールを開いた。
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